依存症の家族との話し方:動機づけ面接のOARSを参考に
「やめたほうがいいのはわかってる」。そう言われると、こちらも「それならどうして」と返したくなる。話し合うつもりだったのに、いつの間にか同じ言い合いをしている。
動機づけ面接(Motivational Interviewing、MI)は、変わりたい気持ちと続けたい気持ちの両方を扱い、本人が自分の理由で変化を考えるのを支える面接法だ。医療や相談の場で使われるもので、家族が身につければ治療が不要になるわけではない。それでも、質問の仕方や聞き方には、日常の会話で参考にできる部分がある。

説得の答えを先に決めない
「仕事のストレスがあるから、飲むしかない」と聞けば、「飲まなくても発散できる」と言いたくなる。しかし、代案を話す前に、何がつらいのかを聞く余地もある。
MIは、相手を言い負かしたり、狙った答えを言わせたりする方法ではない。本人の選択を尊重しながら、困っていることや大切にしたいことを一緒に確かめる。その姿勢があってこそ、次の聞き方が役に立つ。SAMHSAによるMIの解説
OARSの四つの聞き方
OARSは、開かれた質問、是認、聞き返し、要約の頭文字を取ったものだ。以下は説明のために作った会話例であり、実際の相談記録ではない。
O:開かれた質問
「はい・いいえ」で終わらない質問をする。
「最近、お酒のことで気になっていることはある?」
「どうして約束を破るの?」も形式上は開かれた質問だが、責められていると感じられやすい。理由を追及するより、今起きていることを聞く。質問を立て続けにせず、相手が答える時間を取る。
A:是認
実際に見えた努力や工夫を言葉にする。
「昨日は、飲みたくなったことを話してくれたね」
何でもほめればよいわけではない。無理に長所を探したり、できていない約束をできたことにしたりする必要はない。自分が本当に受け止められることを伝える。
R:聞き返し
相手の話を、自分なりに受け取った言葉で返す。
本人:「少しくらい息抜きしたい」
家族:「今は、休める時間が足りない感じなのかな」
これは気持ちを言い当てる試験ではない。「そうじゃない」と言われたら、受け取り方を修正する。「本当は寂しいんでしょう」のように、隠れた気持ちを決めつけないほうが話を続けやすい。
S:要約
聞いたことをまとめ、理解が合っているか確かめる。
「飲むと気が楽になる。一方で、朝起きられないのは困っている。今はそんな感じ?」
やめたい理由だけを抜き出すと、誘導されたと感じることもある。続けたい理由も含めて受け止めたうえで、「この先、どうなったら少し楽になりそう?」と聞く余地を作る。
気持ちを聞くことと、要求を引き受けること
相手のつらさがわかっても、借金の肩代わりをしたり、暴言を受け入れたりする必要はない。
「お金がなくて焦っているんだね。ただ、私が追加でお金を渡すことはできない」
このように、話を聞くことと自分の境界線は両立できる。家族が引き受ける範囲を先に整理したほうが、落ち着いて話せることもある。
また、家族自身が疲れているときに、毎回丁寧な聞き手になる必要はない。「今日はここまでにしたい」と切り上げてもよい。酔っている最中や、暴力・脅しがある場面で練習する方法でもない。
家族だけで練習を続けなくてもよい
会話の仕方を変えても、すぐに本人の行動が変わるとは限らない。変わらなかった理由を、家族の聞き方が下手だったからと考える必要もない。
会話が毎回行き詰まるなら、そのやり取りをメモして家族相談へ持っていく方法がある。「こんなふうに返すと、ここで怒鳴り合いになる」と具体的に話せば、支援者と対応を考えやすい。継続した関わり方を学びたい場合は、CRAFTなどの家族支援も相談の選択肢になる。
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